妊娠出産のため、私立保育園に運よく一時入所できた自閉症の長男(このとき二歳半)。しかし、ここ出身の園児たちは小学校に上がっても、勉強も運動もよくできる子ばかりと評判の厳しいお勉強系私立保育園でした。選択肢がここしか無かったとはいえ、今思えば無謀だったかもしれません。しかし当時の孤立無援の私にはこれしか方法がありませんでした。
その頃の長男の様子
多くの園児に揉まれて、それが刺激になって言葉をしゃべりだすのを期待していましたが、さっぱり効果がありません。前回も書きましたが、しゃべらないのはまだしも、まったく指示が通りません。まわりに興味がないのです(それは今もですが)。ただ自分の行きたいところへまっしぐらにダッシュして、すべてを破壊するだけです。それを止められたらもう何時間も大音量で泣き続けるので、こっちも泣きたくなります。もうどうしたらいいのかわからない。この子の気持ちがわからない。ただでさえ眠れない臨月のお腹を抱えて、昼は一分一秒も目が離せず、夜は毎晩激しい夜泣きで起こされ、心身ともに疲れ果ててこの子を愛しているのかもよくわからない。
保育園では邪魔者
一番身近な母親ですらそうなのですから、前回書いたように保育士さんなんてもっとイライラしていたでしょうね。悪いことに、私立保育園で加配の保育士さん(障害児をヘルプしてくれるフリーの先生)が配置されていない園だったので、その園の中の誰も発達障害児の指導法について知らなかったのです。その園は教育面でもちゃんとしているとして人気で激戦ですし、正式入園にはもちろん面接もありますから、長男のような子は弾かれているからです。実際見ていても、二歳でもみな聞き分けがよくおりこうさんばかりでしたね。
担任の先生は日に日にイライラが増してきて、毎日色々私が怒られることになりました。
「長男くんがとにかくあちこち走って行ってしまうので、一人が必ずマンツーマンでずっとついていなければならず、先生の手が足りなくなるので困るんです!」
このようなことを毎日言葉を変えて言われて怒られて、送迎に行くのが憂鬱でした。保育士さんたちはみんな、迷惑だから退園してほしいという言葉が口から出かかるのをやっと飲み込んでいるような、そんな感じでした。こちらも反論したいけど、ここを追い出されたらもう行くところがないんです。出産の前後二か月だけ、なんとか預かってもらうしかありません。当然二歳なので高ーい保育料も払っています。ちなみに4ヵ月合計で20万円くらいです。
言葉が通じないことでアクシデントが
保育園で毎日ひとくさり怒られてから16:30に降園する私たち。ただ、運動場にはたくさんの遊具があり、長男はそこからなかなか帰りません。延長保育の子どもたちもそこで好き勝手に遊んでいます。その中のひとつに、この保育園のシンボルともいえる、少し大きくて急な滑り台がありました。そこに長男は一心不乱にのぼっていきました。私はお腹が大きくついていけないので、下で見守っているだけです。
ところが、先に上にいた大きい組の女の子が
「のぼってきちゃだめ!」ととおせんぼをするのです。しかし、長男はもちろん大人の指示すら通らないのに子どもの言うことなんて聞くはずがありません。その子を無視して突破しようとしています。なぜか何回も女の子が「のぼってきちゃダメ!」と言うのですが、完全無視です。その瞬間…
女の子が長男を強く押し返し、そのまま長男は悲鳴とともに1m下の地面に頭から落下したのです!(つづく)
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