自閉症スペクトラム児というのは、普通の人と少し(かなり?)違います。ただ、ひとくちに自閉症スペクトラムといっても、その特徴は千差万別です。感覚が過敏だったり、逆に鈍感だったり。とにかく、世間一般の「普通」を大きくこえてしまうことが多く、それが生きにくさの原因となります。
服が着られない原因
療育センターに通っていたころの三歳台のタカ君の場合、冬でも半そでとか夏でも長袖など、チグハグな服を着ていました。季節に合わせた服を着せようとしても泣き叫んでパニックになり、着ることができませんでした。本人は言葉が一年ほど遅れていて知的にも2歳くらいしかなく、私に説明がうまくできないようです。とはいえ、体が丈夫なわけでもないので、そのままにしておくわけにもいきません。周囲の目もありますし、ほとほと困っていました。
しかし、言葉が増えるにつれなんとなく原因がわかってきました。それは意外なことでした。
季節に合った服が着られない驚きの原因とは
子ども服ってすぐ着られなくなるのに全然着てくれないのでそのままサイズアウトしていく服も多く、私はどうしてもタカ君の服の苦手を克服したくて、毎日「どうして着ないの?」と聞いていました。そうすると、うまくしゃべれないタカ君がようやくしぼりだした言葉は
このふく、さむい
え?今は夏でこれは半そでのTシャツだよ?なにが寒いの?
まえにきたとき、さむかったの!
なんと、去年の夏に同じ服を着たときたまたま少し肌寒い日だったらしく、そのときの記憶をまだ忘れていなかったのです。タカ君はなかなかしゃべれなかったし、発達指数も低くて何もわかっていないと思い込んでいましたが、実はいろんなことをわかっていたんです。しかも視覚的な記憶力がかなり良くて、去年その服を着たときに暑かった寒かったということを覚えていて、たまたま気温と自分の快適性が合っていなかったときの服はもう着たくなかったのです。これはまったくの盲点でした。
服へのこだわりの解決法
結局、どうしても去年の記憶が忘れられないため、その悪い記憶を消し去るために私が取った方法とは…
子供服の店にタカ君をつれていき、あらためて好きな服をすべて自分の意思で選んでもらうこと!着られないものはこの際しょうがない。チクチクがいやだなどの触覚過敏ではないのだから、嫌な思い出のある服たちはあきらめてすべてをゼロに戻し、本人が気に入った服なら着てくれるはず!この作戦は…
見事的中!出費はちょっとありましたが、自分の意思で選んだ大好きな服を着るのを嫌がることはその後一切なくなりました。
いやなことを忘れられないのも発達障害の特徴のひとつですが、本当に生きづらいですね。こうやって工夫してなんとかかんとか1つずつ乗り越えていくしかありません。
ちなみに、たくさんの中から選ぶことが難しい子の場合「こっちとこっち、どっちにする?」と二者択一にしてあげると選びやすくなりますし、本人も自分で選んだという達成感が出てやる気が出ますので、良かったらお試しください。
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