一般的に自閉症スペクトラムやその他の発達障害を持つ人は耳で聴いて理解するより目で見て理解するほうが得意な人が多いと言われています。そのため、発達障害児でも絵や図で説明するとみんなと同じようにできたり、心が落ち着いたりするので、療育センターでも「視覚支援」といって絵にかいて説明してもらっていました。どうやら年中も終わりに近づいてきて5歳になったタカくんもそのタイプみたいでした。
文字に興味を示し始める
年中が終わりに近づいてきても、相変わらず集団指示や先生の話はあまり伝わらず、体幹が弱いせいで体操座りもできなくて横にゴロンと転んでしまうようなタカくん。体も周りの子より一回り小さく、しゃべることはあまりできなくて、理由もなくいつもずっとニヤニヤしていて、パッと見るだけでもあれ？この子何か違う…という感じ。
しかし、そのころから文字に興味を示し始めました。始めは、靴箱や荷物かけに書いてある文字がお友達の名前だと気付いたときからです。いちおうお風呂でひらがなカタカナポスターで文字を教えてはいました。単純記憶が非常に得意という特性を持つタカくんは、興味のないものはまったく覚えられませんが、文字がいたく気に入ったようで、しゃべることは三語文がやっとなのにひらがなとカタカナをすごいスピードで覚えていきました。
自閉症かどうか判断するための聞き取りの時に必ず「交通標識などのマークに非常に興味を示すか」と聞かれると思うのですが、これは、自閉症の子がマークにとても興味を示すからと思われます（もちろんマークが好きだから必ず自閉症とは限りません）タカくんにとって、そのマークにあたるものが文字だったのかもしれません。
覚え方はちょっと変わっていて、ひとつひとつの文字を読むのは時間がかかるのですが、おともだちの名前はすぐに読むことができました。これは、おともだちの名前をひとつの「図」のようなものとして形で覚えていたからだと思われます。ちなみに療育センターにいた子のママもまったくこれと同じだと言っていましたので、やっぱり自閉症的な現象なのかも。
このころ、保育園では「みんなのいいところを毎日一人ずつ発表する」というのを帰りの会でやっていたのですが、タカくんは誰がなんの発表をしたか全部覚えていました。総勢30人以上なので一ヵ月半くらいかかる計算です。だから単なる視覚優位とも違うのかな…
この、タカくんが文字に興味を持ったことが、今から考えると運命の分かれ道だったような気がします。
視覚優位を利用して知育玩具を買ってみる
機械的な暗記が得意で視覚優位なら、何か遊びながらその特性を伸ばせるものはないかと考えて買ってみたのが、日本地図のパズルです。普通のパズルでも良かったのですが、少しでもタカくんの発達にいいものを与えないと！と必死でした。
結果は大当たり！、タカくんは日本地図パズルにものすごくハマって、すぐに日本地図を覚えてしまいました。県名にはふりがなも付いているため、大好きなひらがなも読めて、パズルもできて、大満足していたみたいです。ついには、県のピースをさかさにして裏返しても何県かわかるようになってしまいました。日本地図がなんなのかはわかってなかったでしょうけど。手先も使うので脳への刺激にもなって、けっこうおすすめです。でもピースが小さいので、異食がある子や小さい子がいる人は注意したほうがいいと思います。DQ58なのに日本地図を覚えたからなんだっていう考えもあるでしょうけど、とにかく長所を伸ばしてあげたくて。
この子って本当に知的障害なのかな？
また、平面だけではなく立体構造の暗記も得意らしく、何も見ないでいわゆる戦隊もののロボットをブロックで作ってしまいました。それが体のバランスや形などかなりの再現力で、ひとめでそれとわかる出来。
私にはかなり難しく感じる合体変形ロボットも、説明書も見ずに組み立てて遊んでいました。私は説明書を読んでもいまいちわかりませんでした（笑）二台のロボットを組み合わせて違うものにできたりするおもちゃなのですが、パーツも細かくなかなか難しい。
何も見ないでこんなのよくわかるな…
たぶんだけど、パッケージの写真をパッと見て暗記して作っているのでしょう。
このあたりで、ふと疑問がわいてきました。
っていうか、本当に知的障害なのだろうか？どこがとは言えないけど母親の勘？
たしかに数字の上ではそう（DQ58）だけど、少しそういうのとは違う気がする…
こうして、「文字」という武器を手に入れたタカくんは、相変わらず友達もいないしやり取りできないしCMのマネばかりしているけど、もう一歩上のステージを目指して歩き始めたのでした。
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