DQ58の知的な遅れを伴う発達障害児のタカくんが保育園に入園して三か月。いったいどのような変化が起きたのでしょうか。
言葉が増える
目に見えて増えたのは言葉の多さです。言葉が遅いのは発達障害児に現れる特徴的な傾向です。タカくんも4歳半ばにして3語文をゆっくり言ってようやく理解できるかどうかというレベル。言語訓練では「黄色い鳥のカードを取って」と言われれば正確に取ることができますが「大きな黄色い鳥のカードを取って」と言われるとできなくなってしまっていました。そのくらいの感じです。
本来は年少の年齢で通っていた療育センターは、突然違うことが始まってもパニックを起こさないなど、集団の中にいることに慣れることが訓練の中心でした。そして当然ながら通ってきている子どもたちも、就園年齢で入園不可の結論が出された子どもたちなので、あまりしゃべるのは得意ではありません。そのため、同年代の他者との関わりによって発達をうながすということは難しい状態でした。
療育センターに初めて行ったとき、自由時間の静けさにびっくりしたこともあるくらいです。パニックの泣き声や奇声以外はみんな各々黙々と遊んでいるのです。
ところが、普通の保育園児はしゃべるしゃべる！特に公立の自由な保育園だったので、みんな我先に言いたいことを言い合うほほえましい感じ。
それに、タカくんのかなり幼い感じにしっかり者の女子たちが積極的にかかわってくれたりもしました（いわゆるお世話係的なものではありません）。これは親や療育センターの先生にはできないことでしょう。子ども同士の力って不思議です。
ちなみに世の中には「（障害者の）〇〇くんお世話係」みたいな指名をされる子もいるらしいですが、その子の大きな負担にもなりますし、タカくんの主治医によると
すべて任せるくせがついてしまうからお世話係の子にやってもらうのはよくない。自分でやらせてください。
ということなので、そういうふうにされていたら保育士さん等に相談していったんやめてもらうのもいいかもしれません。
他者に興味を示しはじめる
これも大きな変化です。お友達とコミュニケーションを取ることはできませんが、たとえばお友達が転んで泣いていた時、先生を呼ぶことはできないのですがずっとそばにいて心配そうにしていたそうです。
また、アヤちゃん（当時二歳ちょうどくらい）が泣いていると
疲れてしまったのかな？
と心配していました。
他者の悲しい気持ちを読み取ってそのことを心配するというのは、他人に興味が薄い自閉症の子どもにとってはわりと高度な感情だと思うのですが、それが入園三か月できてきているというのは私に希望を持たせました。
また、困ったときは加配（サポート）の先生に言えばいいというのも少しずつわかってきました。
あと、クラスメイトの名前とその親の顔も覚えました。ちなみに1年4ヵ月通った療育センターでは一回も覚えたことはありませんでした。
ただやっぱり、担任の先生がお話をされているときは内容が理解できないため集中できず、寝転んだり集まってこなかったりオモチャで遊んでいたり集まってきてもすぐ輪から抜けていったりと、発達障害児らしい行動もしていたみたいです。
担任の先生は新規採用の男性の先生で、たぶん慣れない仕事でいっぱいいっぱいだったようで、視覚的な支援をしてほしいと言ってもそのときだけ「わかりました」と言うものの馬耳東風なかんじで（笑）担任の先生は運だから仕方ないけれどそこはちょっと不安でした。
お手伝いを始める
この頃突然、食べ終わったお皿をシンクまで持ってくるようになりました。これはたぶん保育園で給食を食べ終わった後に食器をワゴンに片付けるからだと思います。療育センターでは毎日お弁当だったので、そういうことをする必要はなかったのです。これはなかなか感動モノでした。
あと、買い物に連れて行ったとき、何も言わなくても買ったものをエコバッグに入れたり、買い物カゴを置き場所に戻したりしてくれるようになりました。普通の子ならもっと早くにできるようになるのかもしれませんが、私にとってはタカくんが先を読んでお手伝いができるようになるなんて思っていなかったので、こういうひとつひとつに感動してしまっていました。
アヤちゃんの出産で入院したとき、一週間後に退院したら母親の私のことを忘れていて、この人誰？て感じで寄ってもこなかったタカくんが、保育園入園で急激に対人関係の成長を始めている？
今まで自分ひとりの狭い世界だけだったタカくんの地平線が少しずつ広がっていっている。そんな風に確信する私でした。
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