幼稚園のほかの選択肢
前回は、幼稚園にすげなく断られた話でした。私はこのことで非常にダメージを受け、二週間は泣いて暮らしました。療育に行くと決めていたのに、ほんの少しの希望の糸にすがりついてしまったのです。それがブツッと音を立てて切れたとき、私は一生分泣いた後、あらためてこの子と一生向き合って療育に行ってよりよい人生になるように頑張ろうと決意しました。ところが、夫はそうではありませんでした。
幼稚園から断りの電話がかかってきたことを告げると、私は夫に激しく責め立てられました。
お前が余計なことを言うからだ!黙って入れてしまえばわからなかったんだ!だってこの子は障害者じゃないから…
いやいや、もう病院で正式な診断も降りているし、幼稚園の人たちもプロなのだから、見学会の様子を見て無理だと判断したのでしょう。私も、この子は療育に連れていくしかないと説得しました。しかし、夫は認めません。
まだ終わったわけじゃない!ほかの幼稚園を探すんだ!
と聞き入れません。しかし、この子の発達指数からみて、幼稚園は無理だと主治医にも言われているのです。ますます事態はこじれていきました。
無理に幼稚園に入れるとどうなる?
主治医が言うには、この町にはお勉強幼稚園でどんな発達障害の子も入れてくれるところが一つだけあるらしいのです。しかし、そういうところに無理に入れても専門知識を持った先生がいるわけではないので、結局ケガしない程度にテキトーに放置されるだけで、身の回りのことすら何も見につかず時間だけがすぎていってしまい、小学校に上がる直前で
「え?どうしよう!うちの子何もできないんだけど!」
となるのだそうです。それは絶対に避けなければなりません。
何かの本で、そのような子は目立つように違う色の帽子を被せられて、運動場で永遠に一人でくるくる回転しているのを放置されているというのを読んだことがあります。実際、その幼稚園に行っている人の話では、発表会で何もできずにつっ立っている子がいて、途中で先生がひきずって退場させたとのことです。そこの選択肢はないなと思いました。
突然の親の来訪
そんな折、私にはいまいち折り合いの悪い親がいますが、第二子が産まれたこともあり、遠方から突然訪ねてくることになりました。まだ幼稚園お断りショックから立ち直れてないけどまあいいか…
私は長男の自閉症のことは隠しておくつもりで、ひさびさに両親と会いました。いろいろ無難な世間話をしている途中で、父親が何気なく禁断の質問をしました。
「それで、来年長男くんは幼稚園いくのか?」
…私は思わず言葉に詰まり、そして号泣してしまいました。親は大慌てで、何か悪いこと言ったのかと右往左往していました。そうですよね、これは普通の家庭なら孫の成長を喜ぶとても幸せな会話です。しかし、私たちには違うのです。
「この子は幼稚園には行けないの!なぜなら自閉症だから!普通の人生は歩めないの!」
結局泣きながらカミングアウトしてしまいました。親はたいそう驚いていました。そして父から、地元に子どもの発達外来の有名な医師の知り合いがいるからセカンドオピニオンを受けたらどうかと提案されました。
夫を説得するためにも、セカンドオピニオンを受けてダメ押しするのは悪くない。それに、万が一この前の病院が誤診で、この子は普通の子でただちょっと遅れているだけ!と言われる可能性もあります。私はそこに予約の電話を入れることにしました。(つづく)
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